こんにちは、薄紅葵(うすべにあおい)です。
Eさんは70歳代の男性で、肺癌の治療のために入退院を繰り返していました。
Eさんは言葉数は少ないけれど、キュートな笑顔をよく見せてくれる方でした。
入院中、同世代の男性の方々とおしゃべりをしている姿は時々見かけました。
けれども、看護婦(当時)に何か訴えのあるときには奥さまを通してということが殆んどでした。
点滴で気持ちが悪いなどの辛い状態が続いても、弱音を吐くこともありせんでした。
数日間続く点滴が終わる前日の夜になると、「明日で終わりだよね?」と、はにかみながら確認する様子がとても印象的でした。
退院の日には、奥さまがお赤飯を炊いてスタッフ皆様でと置いていかれます。
退院のお礼のご挨拶も奥さまがなさり、Eさんはその後ろで、恥ずかしそうにうれしそうに頭を下げてお帰りになります。
スタッフ皆、退院する姿をうれしく見送りました。
そして、お昼にそのお赤飯をおいしくうれしくいただきました。
昔は、お礼の品を有り難く頂戴することがありました。
(今は、お礼は必要ありません、又はお断りしますと明示してある通りです。)
少しずつ再入院の日が早まりながらも、数年間そのような日々が続きました。
最後の入院は、急変しての入院でした。
Eさんが笑顔を見せてくれることはもうありませんでした。
そして、家族に見送られる中で静かに息を引き取りました。
数週間後のことです。
昼の休憩中に、Eさんに対するケアについて話をしていました。
Eさんの言葉数の少なさに甘えるようなケアになっていたのではないかという反省や後悔がありました。
と、ちょうどその時、Eさんの奥さまがご挨拶にいらっしゃいました。
「お父さんももう入院する必要がなくなった。もうずっと家に居られるからね。」と栗おこわを炊いてスタッフ皆様でと置いていかれました。
Eさんと奥さまの思い出話をしながら、力不足な部分も少しだけ許してもらえたような気持ちで、その栗おこわをおいしくいただきました。
最後までお付き合いありがとうございます。
そしてまた、このブログに足を止めていただけるのを、心よりお待ちしております。